CHROのあるべき姿とは?

CHROのあるべき姿とは?

進化するHRリーダーシップの役割

こんにちは、ZooKeepの郡司です。昨今、CHRO(最高人事責任者)の役割は進化が求められています。

昔のCHROは、会社の「人事部長」のような存在でした。主な仕事は、人材採用・福利厚生・法令遵守・タレントマネジメント・従業員との関係構築など、いわば会社を支える縁の下の力持ちのような存在でした。

しかし時代は大きく変わり、最近では、VUCA(ブーカ)という言葉がよく使われます。これは、Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、予測が難しく、変化の激しい現代のビジネス環境を表しています。

このような時代では、会社もこれまで以上に柔軟に、そして成果を出すことに集中できる組織になる必要があります。そのため、従来のCHROの役割だけでは、会社の経営戦略に対して十分な貢献が見えにくくなってきました。ただ単に人事を管理するだけでなく、さらに会社の成長に直結するような、戦略的な人事機能が求められるようになったのです。

この記事では、現代のCHROのあるべき姿について解説します。

<目次>

1.「CPO(Chief Performance Officer)」への転換:戦略的な一歩

1-1.CHROからCPOへの再定義

1-2.CPOの核となる概念



2.ケーススタディ:L&D部門からパフォーマンス部門への転換

2-1.ある組織の事例

2-2.転換の背景と目的



3.この転換がもたらすインパクト:ビジネス成果と従業員満足度の両立

3-1.ビジネスへの貢献

3-2.従業員のエンゲージメント向上



4.戦略的な意味合い:「人事」から「事業戦略の中核」へ

4-1.CHROの「リブランディング」

4-2.企業価値向上への貢献

4-3.CPOに求められる能力



5.まとめ:現代企業に不可欠なCPOという存在

CPO(Chief Performance Officer)への転換:戦略的な一歩

CHROからCPOへの再定義

先ほどお話ししたように、従来のCHROの役割だけでは、変化の激しい現代のビジネスに対応しきれなくなってきました。そこで、これからのCHROは、「Chief Performance Officer(CPO)」、つまり「最高パフォーマンス責任者」という役割に変わっていくべきだと考えられています。

この変化は、単に呼び方が変わるだけではありません。会社の人事の役割が、「社員の管理」から「会社全体の成果を最大限に引き出すこと」へと、大きく視点を変えることを意味しているのです。

つまり、社員一人ひとりの能力をどうすればさらに引き出せるか、チーム全体の生産性をどうすれば上げられるか、そしてそれが会社のビジネス目標にどうつながるのかを、戦略的に考えるのがCPOの仕事です。この変化は、複雑な市場で会社が成長し続けるために、非常に重要な考え方となります。

CPOの核となる概念

CPOの最も大切な考え方は、「人こそが、会社にとって一番大切な財産である」という認識です。機械や技術ももちろん大切です。しかしそれらを動かし、新しいアイデアを生み出すのは、やはり人なのです。

CPOは、この「人の財産」をどうすれば最も効果的に活用し、会社の売上アップや新しいサービスの開発といったビジネスの成果に直接結びつけられるかを考えます。

これまでは、人事部門は「コストセンター」、つまり会社のお金を遣う部門だと思われがちでした。社員の給料や福利厚生にはお金がかかるため、会社のが支出が増えると考えられていたからです。しかし、CPOという考え方では、人事機能を「プロフィットセンター」、つまり会社の利益を生み出す部門に変えていこうとします。社員の能力を最大限に引き出すことで、結果的に会社全体の利益を増やせる、という考え方です。

ケーススタディ:

L&D部門からパフォーマンス部門への転換

ここで、とある会社で実際にあった変化の事例をご紹介しましょう。

この会社には、昔から「人材育成・学習(L&D:Learning & Development)」という部門がありました。ここは、社員が新しいスキルを学んだり、成長するための研修を企画・実施する部署です。

ところが、この会社はL&D部門を思い切って、「従業員および組織パフォーマンス部門」という新しい名前に変えました。なぜこのようなことをしたのでしょうか?それは、社員の成長のための取り組み(研修など)を、会社のリアルタイムなビジネスの目標や、具体的な成果(パフォーマンス)と、さらにしっかり結びつけるためでした。つまり、「ただ研修をやる」だけでなく、「研修を通じて会社がどう良くなるか」を常に意識する部門になったのです。

転換の背景と目的

では、なぜこの会社はL&D部門を大きく変える必要があったのでしょうか?

従来のL&D部門は、いくつかの課題を抱えていました。例えば、

  • 研修効果が目に見えにくい: 「研修をやったけれど、本当に社員の力が上がったのか?」、「それが会社の業績にどう貢献したのか?」といった効果が、なかなか数字で示しにくいという問題がありました。

  • ビジネス目標とのズレ: 研修の内容が、必ずしも会社のその時々のビジネス目標と一致していないこともありました。会社が今、本当に必要としているスキルが社員に身についていない、といった状態です。

そこで、部門を再編した目的は、大きく分けて2つありました。

  1. 社員の成長と会社の成果を一体化させる: 社員一人ひとりが成長することが、そのまま会社の成果に直結するようにする。そして、それを継続的に改善していく仕組みを作ることです。

  2. データに基づいた意思決定: 「なんとなく良くなった」ではなく、「具体的に何がどう良くなったのか」を、データ(例えば、研修後の業績変化や社員のスキルアップ度合いなど)で確認しながら、改善していくようにしました。そして、そのデータを元にPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善)のように、継続的に見直しを行うフィードバックループを採り入れたのです。

この転換によって、社員の成長と会社の成長が、より密接につながるようになったわけです。

この転換がもたらすインパクト:ビジネス成果と従業員満足度の両立

ビジネスへの貢献

L&D部門が「従業員および組織パフォーマンス部門」へと生まれ変わったことで、会社にとって大きなメリットが生まれました。一番の変化は、社員向けの研修や能力開発の取り組みが、会社の具体的なビジネス目標とハッキリと結びつくようになったことです。

これまでは、「とりあえず研修を受けてみよう」という感じだったのが、今では「この研修を受けると、〇〇のスキルが上がって、それが会社の売上アップに貢献する!」といったように、戦略的な意味合いを持つようになりました。

つまり、社員がどれくらい成長したか、その成長が会社の売上や生産性、お客様の満足度といった具体的な数字(パフォーマンス指標)にどう影響したかをしっかり見て、それに基づいて研修や教育のやり方を改善していくため、会社のビジネス成果をグンと伸ばせるようになりました。

従業員のエンゲージメント向上

この変化は、会社にとって良いだけでなく、そこで働く社員にとっても素晴らしい影響を与えます。

社員は、自分が受ける研修やスキルアップの機会が、単なる「勉強」ではなく、自分の仕事や将来のキャリアに直接役立つことを実感できるようになりました。自分の頑張りが会社の成果につながっていることが目に見えると、仕事への満足感や「自分は成長している!」という実感も大きくなります。

さらに、「個人の成長が会社の成長に直結する」という意識が社員の中に広がることで、会社全体の一体感も強まります。社員が自分の会社に愛着を持ち、長く働きたいと思う気持ち(従業員エンゲージメント)が高まるので、社員が辞めにくくなる(従業員リテンションの改善)という良い結果にもつながるのです。

「人事」から「事業戦略の中核」へ

CHROの「リブランディング」

CHROをCPO(Chief Performance Officer)へと呼び方を変えることは、人事という仕事のイメージを大きく変える、言わばリブランディングのようなものです。

この新しい肩書きによって、CPOは会社全体のパフォーマンス(成果)を引っ張っていく、非常に重要な役割だと改めて位置づけられます。つまり、CPOは、会社が掲げる売上目標や事業拡大といったビジネスの成果と直接つながることを示しているのです。人事の仕事は、これまでの「社員をサポートする裏方業務」というイメージから、「会社の事業戦略の中核にある、なくてはならない機能」だという強いメッセージを打ち出していると言えるでしょう。

企業価値向上への貢献

最近、「人的資本経営」という言葉を耳にする機会が増えました。これは、社員一人ひとりの能力やスキルといった「人」を、会社にとっての「資本」として捉え、積極的に投資して育てていくことで、会社の価値を高めようという考え方です。

この考え方が重要視される現代において、CPOは会社の価値を上げるために、なくてはならない存在になります。投資家やステークホルダーに対して、「この会社は社員の力を最大限に引き出し成長させているから、将来性がある」とアピールするための、重要なポイントになるのがCPOの役割となるのです。

CPOに求められる能力

では、CPOとして活躍するには、どのような能力が必要なのでしょうか?

まず、最も大切なのは経営戦略への深い理解です。会社がこれから何を目標にして、どのような方向に進んでいこうとしているのかを、誰よりも深く理解している必要があります。その上で、「どうすれば社員の力を借りて、その目標を達成できるか」を考えられる力です。

次に、データ分析能力も重要です。経験や感覚だけでなく、数字(データ)を使って、社員のパフォーマンスや育成の効果などを分析し、論理的に考える力が求められます。

そして、会社を良い方向に変えていくための変革推進力や、社員を巻き込み、目標に向かって引っ張っていく強力なリーダーシップも不可欠です。CPOは、まさに経営と人事、そして社員の間に立って、会社全体を動かすキーパーソンと言えるでしょう。

まとめ:現代に不可欠なCPOという存在

CPOにおいて一番大切なのは、「人」は会社にとってかけがえのない財産であるという考え方です。そして、その大切な「人」の力を最大限に引き出し、会社のビジネスの成果に直接つなげていく役割こそが、これからのCHRO(CPO)のあるべき姿です。

会社が長く成長を続けていくためには、人事の仕事が、ただ社員の管理をするだけでは不十分です。人事部門が、会社の経営戦略を一緒に考え、それを実現するための戦略的なパートナーとなることが不可欠となります。

CPOは、社員一人ひとりの成長を応援しながら、それが会社の目標達成にどうつながるかを常に考えて実行します。そうすることで、会社と社員、双方のパフォーマンスを最大化し、未来を切り拓くための「鍵となる人物」と言えるでしょう。

これからの時代、CPOの存在は、事業戦略の中核と位置づける強いメッセージとなります。

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ZooKeepは、採用管理システム(ATS)、コンサル型のRPO(採用戦略〜採用代行)、人材戦略コンサルティングを組み合わせ、日系企業の国内外における採用・定着・組織づくりを支援するHRテック企業です。テクノロジーとサービスの実行力を組み合わせ、企業の成長を人材面から支えます。

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